OECD学習到達度調査発表!日本の女子の理系到達度とジェンダーギャップは?

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OECD学習到達度調査発表!日本の女子の理系到達度とジェンダーギャップは?

こんにちは、一般社団法人Waffleです。私たちは、「STEM(Science/ Technology/ Engineering / Mathematics) 分野への進学・就職を選択する女子学生を応援する」ことをミッションに日々活動しております。

先日、OECDの学習到達度調査(The Programme for International Student Assessment 、通称PISA)の2018年の結果が発表されました。PISAの結果は、教育の現状を考察する上で一つの大きな指標となります。今回の記事では、PISAの結果から理系科目(数学的リテラシーと科学的リテラシー)とジェンダーギャップに関する示唆を共有します。

PISAとは
OECD(経済協力開発機構)の生徒の学習到達度調査(PISA)は、義務教育修了段階の15歳児を対象に、2000年から3年ごとに、読解力、数学的リテラシー科学的リテラシーの3分野で実施(2018年調査は読解力が中心分野)。日本は、高校1年相当学年が対象で、2018年調査は、同年6~8月に実施。

文部科学省・国立教育政策研究所(2019)より抜粋

学力における男女差

<数学的リテラシーの差>
日本では、男子は数学的リテラシーにおいて女子より 10 ポイント高い得点であり、これは OECD 加盟国の平均の男女差(5ポイント)よりも大きい点差でした。

<科学的リテラシーの差>
日本では、女子と男子は科学的リテラシーにおいて同じ程度の得点でありました。

以上より、数学的リテラシーに関してはOECD加盟国平均でも男女差が存在し、日本だとより大きな差が生じていることがわかります。科学リテラシーに大きな男女差がみられなかったことは嬉しい結果です。

職業希望調査における男女差

PISAでは学力だけでなく、将来の職業希望調査も行われております。「公平性とジェンダー」という章にて大きく取り上げらていたのが、「将来ICT関係の職業に就くことを期待している割合の男女差(注)」です。

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「ICT関係の職業に就くことを期待している割合」について、日本の女子学生で「はい」と答えた割合は、同質問を受けた63カ国の女子学生のうち最も低い数値で、3%でした。同様に男子学生も低く、8%でした。

また、「はい」と答えた日本の学生の男女差は統計的に有意であり、ICT関連の職業選択に有意な男女差が認められることが明らかになりました。

同質問へ「はい」と答えた学生の割合のOECD36カ国平均は、女子学生で10%以上、男子学生で25%以上であり、こちらもまた男女差は有意であるとされています。

以上より、ICT関連の職業への希望度は、日本の学生は総じてOECD36カ国平均より低く、女子においては63カ国の最下位であり、男女差も存在するということがわかりました。

学校教育の質が職業選択につながっていないおそれ

OECDのレポートでは、男女の賃金格差の一因として「人生の早い段階でもたらされる職業選択の男女差」が指摘されています。2012年の調査では、男女ともに同じ成績であっても、両親は「娘」より「息子」にSTEM分野に関する職業を選んで欲しいと期待している結果も出ています。

同レポートは、男子の方が職業を選ぶための情報や機会を得やすい状況にあるとし、女子に対して、就業者やキャリアカウンセラーからのポテンシャルキャリアへの啓発を促しています。

日本の課題

日本は、学力に関しては、数学的リテラシーに男女差が現れることが明らかになりました。また、職業選択に関して、男女ともに学習習熟度はOECDの平均付近であるのに対し、ICT関連の職業選択となると低いレベルに落ちてしまうことがわかりました。数学的リテラシーの結果や、ICT関連の職業選択の男女差も明らかになりました。

今後、より一層と必要になるICT関連職への興味の薄さ、また、確実に存在する男女格差を克服するために、日本はどのような取り組みをするべきでしょうか。

残念ながら、日本の文部科学省・国立教育政策研究所のレポートからでは、このジェンダーギャップと職業選択に関する指摘は抜けております。また、来年から始まる新学習指導要領でもSTEM分野の義務教育については政策が増えていますが、そこから一歩進んだ、将来の職業選択を促すような内容は見つかりません。

一方、最近では女子中高生を対象としたイベントを企画するIT企業が増えてきたり、Technovationなどの女子中高生を対象としたアプリコンテストが世界的に開催されるなど、民間ではジェンダーギャップに対するアクションが増えてきました。

私たちも、その一団体として実際にICT関連で働いている女性のロールモデルを身近に感じてもらう機会や、プログラミング体験の機会を提供していく予定です。ICT、STEM教育への関心が高まるなか、その教育を職業選択へつなげられるよう一層努力していきたいと思います。

参考文献

OECD, Andreas Schleicher (2019) “PISA 2018 Insights and Interpretations”
OECD(2019), “PISA 2018 Results COMBINED EXECUTIVE SUMMARIES
VOLUME I, II & III”

文部科学省・国立教育政策研究所(2019) “OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント”
文部科学省・教育課程部会(2019) “教育課程部会における審議の状況”
新井 健一(2018) “これまでのSTEM教育と今後の展望”

注:「将来ICT関係の職業に就くことを期待している割合の男女差」に関する数値は、「トップ層(3つのコア科目すべてで少なくとも2以上、かつ、数学とサイエンスのいずれかで5または6のスコアを取った学生)」を対象とした回答から引用しました。また「ICT関連職」の原文は「Science and engineering professionals」です。OECD平均はスペインを除いたOECDの国とコロンビアの平均です。OECD平均、日本ともに男女差は統計的に有意な差とされています。

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