(前編)82年生まれ、キム・ジヨンと89年生まれの私の世界はどう違う?ー(前)学級員長・ハラスメント・就活について

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(前編)82年生まれ、キム・ジヨンと89年生まれの私の世界はどう違う?ー(前)学級員長・ハラスメント・就活について

はじめまして。WaffleプロボノのAtsukoです。

先日、「82年生まれ、キム・ジヨン」を読みました。

「82年生まれ、キム・ジヨン」とは、韓国で100万部を超えるベストセラーとなった小説で、1982年に生まれたキム・ジヨンという女性の人生を題材に、女性が社会で直面する様々な困難や差別を書いている小説です。すでに映画化もされており、日本でも今年10月に全国で公開されます。

女姉妹のみ、中高女子校という、女ばかりの環境で育ち、社会人になってからもリベラルな人が周囲に多く、子どものいない私にとっては、本で描かれる女性の困難について共感できる部分もあれば、正直なところ、実感が沸かない部分もありました。
また、韓国の話なので、日本とは状況が違うのでは?という気持ちが湧いたのも事実。

そこで、「82年生まれ、キム・ジヨン」のストーリーに沿って、日本の現状についてデータをもとに調べてみました。(以下、小説のネタバレあり)
「学生生活〜就職まで」と「就職後、結婚、出産」で、前編・後編に分けてお送りします。

学級委員の男女比は?

「最近の国民学校では女子の学級委員がすごく多いんだって。40パーセント以上だってよ。ウニョン(主人公の姉)やジヨンが大きくなるころには女の大統領が出てくるかもね。」

これは、主人公のジヨンが小学生の頃、母親に言われた言葉です。
主人公は82年生まれなので、この言葉は90年頃でしょうか?
当時とは時代も国も違いますが、今の日本はどうなのでしょうか?

2019年の大津市の教育委員会の調査によると、小学校の児童会長の男女比は1対1であるにも関わらず、中学生になると生徒会の役員率は女子の方が多いにも関わらず、女子の生徒会長は1割になってしまうとの事です。


児童会長になりたくない理由は、女子では「目立ちたくない」がどの学年でも最も多く、「何かをする時、失敗が怖くて迷う」と答える傾向は、女子が男子に比べ約3~7倍高いという結果になりました。

「生徒会長・副会長に男女どちらが就くべきか」との問いで、「会長は男子」(19.1%)と答える中学生が「女子」(同1.9%)を大きく上回っています。
大津市は「子どもの時から気づかないうちに性別役割分担意識が醸成され、社会での管理職登用率の男女差などに影響している可能性がある」と分析し、女子児童・生徒が自信を高められるようなセミナーやワークショップの開催を検討しています。

参考)
中学の生徒会長は男子が9割 滋賀・大津市が男女比調査(教育新聞)
中学で女子の生徒会長なぜ少ない? 「目立ちたくない」「失敗怖い」多く(京都新聞)

ストリートハラスメントの割合は?

ジヨンは高校生の頃、予備校の帰り道に見知らぬ男子生徒から後をつけられ怖い思いをします。近くにいた女性に助けられたものの、父親にはジヨン自身の服装や夜遅くに予備校に通う事、危ない人を見分けて避けられなかった事など、ジヨンが悪いかのように怒られてしまいます。



夜道で怪しい人に声をかけられた、電車で痴漢にあった等、女性の方は怖い思いをした事がある人が多いのではないでしょうか?私の通っていた女子校の通学路でも、雨の日に現れる露出狂がいて、学校からよく注意喚起をされていました。

女性の7割が電車や道路でハラスメントを経験。「実態調査」でわかったこと」では、女性の70%が電車や道路で何らかのハラスメントを経験しているとあります。痴漢被害が最も多いのは10代の22.9%で、痴漢被害者の約半数が「我慢した」と答えています。


※BuzzFeedの記事より抜粋


2018年に福岡県県警が行った「痴漢犯罪に関するアンケート」でも「我慢した」「怖くて何もできなかった」という回答が最も多くなっています。また、本アンケートでは、痴漢被害にあった41.5%の人が被害を人に相談していないと答えています。

最近は、元ヤフー社員が痴漢被害を可視化する「痴漢レーダー」というアプリを開発したり、JR東日本がスマホの専用アプリから痴漢被害を車掌に通報するシステムを開発したりと、テクノロジー面でも対策がされています。ハラスメントを自衛に任せず、犯罪として断固と許さない体制をとっていく必要があります。

参考)
女性の7割が電車や道路でハラスメントを経験。「実態調査」でわかったこと(BuzzFeed)

痴漢犯罪に関するアンケートの結果(福岡県警察)

女性は就活も厳しい?

「でも就職説明会のときに来てた先輩たち、見たでしょ。うちの学校からでも、いい会社にいっぱい行ってるよ」
「それ、みんな男じゃない。あんた、女の先輩を何人見た?」


これは就活中のジヨンの女友達の発言です。
現代において、女性だからという理由で就職で苦労するなんて事があるのでしょうか?

これは、韓国の事例にすぎないのでしょうか?

2017年にアイデムが2018年卒新卒採用を行う企業の採用担当者901名を対象に行ったアンケートでは、採用の理想の男女比で最も多かったのが「男性7:女性3(18.9%)」という回答でした。「男性5:女性5」は18.2%、「理想の男女比はない」は11.1%で、53.4%の企業が男性を多く採用することを理想としていました


ただ、これは2017年の調査なので、男女平等意識が強くなっている最近では変わってきているかもしれません。ユニリーバは2020年度採用選考から顔写真の提出や性別の申告を不要にしています。また、今年の7月には日本規格協会が、JIS規格の参考例として公表していた性別欄や顔写真欄のある履歴書を様式例から削除しており、文具大手のコクヨも履歴書の変更を検討しています。これからは就職活動の応募書類で性別を問われることはなくなるかもしれません。

参考)

新卒採用、企業が理想とする男女比は?(マイナビニュース)

企業から消える「性別」ユニリーバ、KDDI……コクヨも履歴書の変更を検討(Business Insider)


以上、前編は「82年生まれ、キム・ジヨン」の物語に沿って、学生時代から就職までのジェンダーギャップについて調べてみました。学級委員長へのステレオタイプ、ストリートハラスメント、そして就活での隠れた男女差別、と様々なハードルを乗り越える必要があるのはジヨンも私たち日本の女性も同じようです。就活に関しては、大企業が課題意識をもち少しずつ変化してきており、今後に期待です。

続いて後編では、就職後の結婚・出産などについて取り上げます。

後編記事はこちら