(後編)82年生まれ、キム・ジヨンと89年生まれの私の世界はどう違う?ー昇進・出産・再就職について

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(後編)82年生まれ、キム・ジヨンと89年生まれの私の世界はどう違う?ー昇進・出産・再就職について

こんにちは。WaffleプロボノのAtsukoです。
前編では「82年生まれ、キム・ジヨン」の物語をもとに、「学生生活から就職まで」の話題について取り上げました。後編では、キム・ジヨンの「就職、結婚、退職」にまつわる話をもとに日本のデータを解説していきます。(以下、小説ネタバレあり)

「82年生まれ、キム・ジヨン」を参考に、日本のデータを調べて見た(前編)はこちら


日本のガラスの天井指数は?

「大韓民国はOECD加盟国の中で男女の賃金格差が最も大きい国である。2014年の統計によれば、男性の賃金を100万ウォンとしたとき、OECDの平均では女性の賃金は84万4000ウォンであり、韓国の女性の賃金は63万3000ウォンだった。また、英国の『エコノミスト』誌が発表した「ガラスの天井(マイノリティや女性の昇進を妨げる、目に見えない壁)指数」でも韓国は調査国のうち最下位を記録し、最も女性が働きづらい国に選ばれた」


「ガラスの天井」とは、資質や成果にかかわらず、女性やマイノリティの組織内での昇進を阻む、目に見えない制限をたとえた言葉です。

英国の『エコノミスト』誌の「ガラスの天井指数2020」によると、韓国はOECDに加盟している29ヶ国中ワースト1位です。日本はワースト2位で、男性の賃金を100万円とした時、女性の賃金は75.5万円という状況です。


また、賃金以外の分野でもガラスの天井は存在します。

特に女性議員の割合が低く、OECD平均が30.8%なのに対し、日本は10.1%と最下位です。また、GMAT(MBAへの入学希望者を対象に行われる入学適性テスト)の受験者の女性割合も最下位でOECD平均37.1%のところ、日本は24.8%です。
管理職比率はワースト3位(OECD平均32.5%、日本14.9%)、役員比率はワースト2位(OECD平均25.4%、日本8.4%)でした。

逆に、日本がOECD平均を上回る分野もあります。日本の育児休業制度は諸外国に比べて整っており、育児給付金が給付される育児休業の期間は男女ともにOECD平均以上です。特に男性で最大限の育児給付金が給付される育児休業期間については、29ヶ国中で1位と最も長くなっています。(OECD平均4.9週、日本30.4週)

男性の産後休業についての制度についても話が進んでいますが、日本は制度が整っているので男性も産休・育休を活用してほしいですね。


参考)
Iceland leads the way to women’s equality in the workplace(The Economist)


出産で仕事をやめる人はどれくらい?

「結局、夫婦のどちらか一人が会社を辞めて子どもの世話をするしかないという結論が出て、その一人とは当然、キム・ジヨン氏だった。チョン・デヒョン氏の会社の方が安定していて、収入も多いし、またそれらすべての理由とは別に、夫が働き妻が子どもを育てるという暮らしが一般的だからである。」

日本では、最近は出産しても働き続ける人が増えたと聞きますが、どれくらいなのでしょうか?厚生労働省の「平成30年度版 働く女性の実情」によると、子育て世代の30代女性が労働市場から離れてしまい、40代になって戻ってくるというM字カーブ現象はゆるやかになっていて、現在は70%以上の女性が30代になっても仕事をしています。

しかしながら、配偶者の有無で数値は大きく異なり、「35歳まで」かつ「配偶者あり」の女性で働いている人は50%程度です。


また、ジヨンは第1子の出産を機に仕事を辞めましたが、出産を機に仕事を辞める人の割合はどの程度なのでしょうか?


平成30年に内閣府男女共同参画局が公表した『「第1子出産前後の女性の継続就業率」及び出産・育児と女性の就業状況について』によると、日本も働く女性の半数近く、46.9%が未だ第一子の出産を機に退職してしまうのです。妊娠前から無職だった人も23.6%ほどいるので、第一子出産タイミングで就業を継続している女性は、女性全体の38.3%ほどです。
ただ、出産後も仕事を継続する女性の割合は年々上昇しており、今後も上昇していく事が予想されます。

参考)
平成30年度版 働く女性の実情(厚生労働省)

「第1子出産前後の女性の継続就業率」及び出産・育児と女性の就業状況について(平成30年に内閣府男女共同参画局)

一度辞めると再就職しにくい?

「会社を辞めた女性の半分以上が、5年経っても新しい勤め先を見つけられずにいるのが実情だ。やっと再就職しても、職種も雇用形態も下方修正されることが多い。」


1歳の子どもが保育園にいくようになってから、ジヨンは生活のために復職を検討します。ライターなどのスキルアップの講座に通おうと思うも、多くは会社員向けの夜間しかやっておらず、夜間にシッターを雇う余裕のないジヨンは断念してしまいます。ジヨンは子どもを産んだだけで興味や才能やまで制限されたような気持ちになってしまいます。

日本でも、出産・育児に関わらず、ブランクがあると再就職が難しいという話は聞きますがデータ上ではどうなのでしょうか?


厚生労働省の「2019年 国民生活基礎調査」によると、末子の年齢が上がるにつれ「仕事なし」の女性の割合は減っており、子どもが大きくなるにつれ働く女性が増えていることが分かります。ただ、末子の年齢があがるにつれて、非正規の職員の割合は増えるにも関わらず、正規の職員の割合は増えるどころか減っています。ここから、一度仕事から離れた女性は非正規として再就職していることが多く、正社員としての就職は少ないことが分かります。

日本マイクロソフトを始めとした外資系企業では、リターンシッププログラムという、男女を問わず育児や介護などでやむなく離職した人を対象にしたプログラムを実施しています。 参加者は3~6カ月間の有給インターンシップの後、参加者と企業の双方が合意すれば正社員として就職することができます。再就職の仕組みや制度が整うと、男女ともに人生のフェーズに合わせて働き方を選んでいけるのではないでしょうか。

参考)
2019年 国民生活基礎調査(厚生労働省)
【外資系企業で試しに働き、再就職】日本マイクロソフト主催、外資系企業9社による「リターンシッププログラム」合同説明会が開催されました。(30歳からのインターンシップ)

最後に

「私にはジウォン(キム・ジヨンの1歳の娘)より5歳年上の娘がいます。大きくなったら、宇宙飛行士か科学者か作家になりたいそうです。娘が生きる世の中は、私が生きていた世の中より良くなっていないくてはなりませんし、そう信じ、そのようにするために努力しています。世の中の全ての娘たちがより大きく、より高く、より多くの夢を持つことが出来るよう願っています。」

著者チョ・ナムジュさんのあとがきより。


ジェンダーギャップ指数121位の日本では、今まで女性の大統領がでたことはありません。「2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度にする」と2003年に政府が掲げた目標は達成されることはなく終わりました。公益社団法人ガールスカウト日本連盟の『「ジェンダー」に関する女子高校生調査報告書 2019』では、女子高校生の6割が性差別を実感していると答えています。

あとがきにあるように、子どもたちが生きる未来は今より良くなっていなければいけません。一人一人がジェンダーについて、まずは知ること、そして意見をもち、アクションをしていくことで社会はより良くなっていくと私は信じます。


参考)
「ジェンダー」に関する女子高校生調査報告書 2019(公益社団法人ガールスカウト日本連盟)