【国際ICTガールズ・デー】「自分にしかできないことが、ある。」車椅子ユーザーの高校生が、テクノロジーで社会を変えようとした話

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【国際ICTガールズ・デー】「自分にしかできないことが、ある。」車椅子ユーザーの高校生が、テクノロジーで社会を変えようとした話

林屋 実希さん/大学2年生(情報デザイン専攻)/Technovation Girls 2024 Lenovo賞受賞


4月23日(木)は、国際ICTガールズ・デー。テクノロジーに挑戦するすべての女子を応援するこの日に、Technovation Girls 2024に参加した林屋 実希さんのストーリーをお届けします。

「自分には障害があるから、情報系の道には行けないかもしれない」——そんな不安を抱えながらも飛び込んだ先に、自分にしかできないアイデアがあった。自分の経験がそのまま課題解決の力になった、林屋さんのストーリーです。


STEMとの出会い——「面白そう」から「でも自分には無理かも」まで

きっかけは、小学生の頃のごく日常的な光景でした。

「父がリビングでパソコンをいじっているのを見て、面白そうだなと思って。パワーポイントのテンプレートで遊んだりしていました」

中学生になって技術の授業でプログラミングに触れ、「やっぱり好きだ」と確信した。でもその気持ちと同時に、ある不安も大きくなっていきました。

「自分には障害があるので、体力的な面やスピード面で、みんなと同じようにコーディングできるのかなって。高校1年生くらいから現実を見るようになって、ガッツリ情報系の道には進めないかなと思って遠ざけていた部分がありました」

学ぶことを否定する大人はいなかった。でも自分自身が、ブレーキをかけていた。

転機は、学校の先生との出会いでした。日頃から林屋さんがパソコンや情報に詳しいことを知っていた近藤先生が、ある日声をかけてくれました。「こういうのあるんだけど、どう?」——それがTechnovation Girlsとの出会いでした。


アプリ「SmooPe」誕生——「電車を待つ40分」が教えてくれたこと

Technovation Girlsでは、社会課題を解決するアプリを開発します。林屋さん達のチームが選んだテーマは、林屋さん自身が長年感じてきた課題でした。

「車椅子で電車に乗ろうとすると、40分近く待たされることもあって。『自力で行った方が早いじゃないか』って思うこともありました。みんなは普通に電車に乗れているのに、なんで自分はこんなに待たなきゃいけないんだろうって」

ある日、最寄り駅でふと気づいたことがありました。

「自分の最寄り駅で、駅員さんがアプリを使って他の駅員に連絡を取っているのをチラッと見て気づいたんです。『駅員同士がアプリで連絡を取り合えるなら、同じように車椅子ユーザーと駅員をつなぐアプリを作れば、スムーズに乗れるんじゃないか』と」

車椅子ユーザーと駅員をつなぐアプリ「SmooPe(スムープ)」のアイデアが生まれた瞬間でした。

ただ、開発を進める中で気づいたことがありました。

「車椅子ユーザー側の視点は私が持っている。でも駅員さん側の事情は誰も知らない。それを知らなければ、本当の解決にならないと思って、鉄道会社に直接連絡を取ってインタビューをお願いしました」

当事者だからこそ気づけたアイデア。当事者だからこそ動けた一歩でした。


チームの多様性が、開発の力になった

Technovation Girlsはチームで取り組むプログラムです。林屋さんのチーム「Majaboot(マジャブー)」は、全国各地から個性豊かなメンバーが集まっていました。

「英語が得意な子もいれば、デザインが得意な子もいて。みんなそれぞれ違うところが強みで、私は当事者として実情を知っているのが自分の一つの強みでした。それぞれ違うところがいいところだったので、協力し合ってやれたのはすごくいい体験でした」

カツカツのスケジュールの中、それぞれの強みを持ち寄りながら開発を進めたチーム。鉄道会社へのインタビューも、英語でのリサーチも、デザインも。誰か一人ではできなかったことが、力を合わせることで形になっていきました。みんな違うからこそ、補い合えた——そのチームワークが、このプロジェクトの一番の強さだったと思います。


「まさか」の受賞——全員で舞台に上がり直したあの瞬間

ピッチイベントへの進出が決まった時も、Lenovo賞を受賞した時も、林屋さんは「まさか」と思っていたと言います。忙しい中で準備を続けたチームにとって、それは本当に予想外の結果でした。

「当日もカツカツのスケジュールで取り組んでいたので、発表中にセリフが飛んでしまった場面もあって。でも終わった後に『楽しかった』ってみんなで話していた矢先に、Lenovo賞の受賞の発表があって。全員であわてて舞台に上がり直したのを覚えています。全く予想していなかったので、本当に嬉しかったです」


Technovation Girlsが変えた、進路と自分自身

この経験は、林屋さんの進路を大きく変えました。

「自分が経験してきたからこそできることがあるんだなと実感できたので、とりあえずやりたいことをやろうって思えるようになりました」

大学受験ではSmoopとTechnovation Girlsでの経験をプレゼンして合格。福祉にも情報にも興味があって悩んでいたけれど、Technovation Girlsを通じた気づきが進路を決めた理由になりました。

「テクノロジーを手にすることで自分がやりたいことがより広がるんだと気づきました。社会の問題を解決していくための、福祉のためのテクノロジーっていう捉え方ができたので、そこが大きかったです」

今も「SmooPeを本格的に実装できる力をつけたい」と学び続けている林屋さん。情報デザインを学びながら、自分が解決したい課題をテクノロジーで形にするための土台を、一つひとつ積み上げています。


次世代へのメッセージ

「自分にしかできないことが、ある。」

テクノロジーは、自分の経験を力に変えてくれる。そのことを、林屋さんのストーリーは教えてくれます。あなたの「やってみたい」を、Waffleは応援しています。