第5次男女共同参画基本計画素案に対するパブリックコメントを橋本大臣に提出しました

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第5次男女共同参画基本計画素案に対するパブリックコメントを橋本大臣に提出しました

2020年7月31日に発表された第5次男女共同参画基本計画素案に対し、9月4日に内閣府男女共同参画局の橋本内閣府特命担当大臣(男女共同参画)にユース提言書を提出してきました。今回のユース提言書は、#男女共同参画ってなんですか?さんを中心として、Voice Up Japanさん、Japan Youth Platform for Sustainabilityさん、プラン・インターナショナル・ユースグループさんと共同で作成しました。

この記事では、Waffleが提言した「第4分野 科学技術・学術における男女共同参画の推進」に関するパブリックコメントを共有いたします。

素案はこちら(第5次男女共同参画基本計画策定に当たって の基本的な考え方(素案))からご覧いただけます。

提言項目

  • 基本認識への追加
    • 日本の科学技術分野の女子研究者数は世界的にみて非常に低水準である
  • 1.科学技術・学術分野における女性の参画拡大について
    • 具体的な指標を伴う成果目標の設定と評価のメカニズム
  • 2.男女共同参画と性差の視点を踏まえた研究の促進に関する提言について
    • ジェンダーステレオタイプによる倫理問題の防止
  • 4.女子学生・生徒の理工系分野の選択促進及び理工系人材の育成について
    • 理工系分野におけるロールモデルの存在とその重要性の周知に関する施策
    • 教員や保護者へのアンコンシャス・バイアス、女子学生のステレオタイプ脅威に関する理解促進施策

基本認識への追加

【日本の科学技術分野の女子研究者数は世界的にみて非常に低水準である】

第5次男女共同参画基本計画素案における「基本認識」には、科学技術分野での男女共同参画を進める必要性が記載されています。しかし、現在の科学技術・学術における女性の参画をめぐる問題は非常に深刻です。日本の科学技術分野の女子研究者比率がOECD最低であること、この分野の女子教育・啓発が急務であることを示すため、下記の内容を明記することを強く求めます。

第一に、STEM分野の女子研究者比率に関して、素案では、「日本は16.6%と諸外国と比較して低水準にとどまっている」とされています。しかしながら、本数値の出典となったOECD統計によると、データが掲載されている国の中でワースト1位となっています。また、女子学生の理系志望率が極めて低いことも課題として挙げられます。国際学力調査PISAにおいて、日本の女子学生は常に数学でトップレベルのスコアを出しており、国際比較では上位でありながら、理系志望率が非常に低いことが特徴です。PISA2018年調査によると、科学技術分野の仕事につきたい15歳の女子学生は3.4%でありOECD加盟国の中でワースト1位です。科学技術政策で提唱されているSociety 5.0の実現に向けて次世代である10代の科学技術分野の志望率が低いことは大変大きな問題であり、正しい現状認識が必要です。そのため、こちらの記載について「日本は16.6%であり、諸外国と比べ非常に低水準である。」といった読み手が危機感を持つ記載としていただきたいです。

第二に、こうした女性研究者の比率や、理系志望率が低い現状の要因に関しても明記し、以降に記載されている具体的な取組によって課題を解決できると示すことが重要と考えます。科学技術分野で活躍できる女性が少ない要因としては、「周囲の女子の進学動向,親の意向,ロールモデルの不在等の環境」が指摘されています。また、「女性は数学が苦手」というステレオタイプ脅威、親からの理系分野への勧めが息子より20%低いなどが挙げられているため、基本認識の「研究者の前段階となる大学・大学院生 における専攻分野別の女性比率を比較すると、理工系学部が低い。」という文の後に「この状況には周囲の女子の進学動向,親の意向,ロールモデルの不在等の環境が影響している。」と追記いただきたいです。

1 科学技術・学術分野における女性の参画拡大について

【具体的な指標を伴う成果目標の設定と評価のメカニズム】

これまで内閣府の理工チャレンジや各大学が理系分野の女子学生比率をあげるために多額の助成金を支出し、様々な取り組みを行っているのにも関わらず、理系分野の女子学生比率は過去30年間ほぼ横ばいです。この状況には、定量的な目標を設定していないことが一因ではと考えています。第四次男女共同参画基本計画の成果動向においては、大学(学部)の理工系の学生に占める女性の割合に関し、成果目標(期限)を「前年度以上(毎年度)」と記載されていましたが、第五次男女共同参画基本計画では、達成可能、かつ、状況を前進させる定量的な成果目標を取り入れることを求めます。アメリカでは、カーネギーメロン大学およびハーベイマッド大学が定量的な目標を設定することで、コンピューターサイエンスの学部の女性比率を約10年で8%程度から50%程度(2016年時に達成)まで増加させました。そのため、下記の変更を提案します。

  • (2)具体的な取組、ア①「研究職や技術職として研究開発の分野で指導的地位に締める割合を高める」に対し、「人事異動等の際には、指導的地位の候補者として一定数の女性候補者を含めること」を追記し、推進していただきたいです。
  • 同②「科学技術基本計画における数値目標を踏まえ、科学技術・学術分野における女性 の新規採用・登用に関する数値目標の達成に向けて、各主体(大学、研究機関、学術 団体、企業等)が自主的に採用・登用に関する目標を設定し」に対し、同様に「候補者の中の女性割合を一定数に保つこと」を追記し、推進していただきたいです。また、科学技術基本計画の数値目標を大幅に上回った主体に対しては、運営費交付金や私立大学等経常費補助金等の増額など、インセンティブを与えることも有効と考えます。
  • 日本ではポジティブ・アクションへの理解が進んでおらず、同④「国が関与する科学技術プロジェクト等におけるポジティブ・アクションの取組を推進するなど、科学技術・学術に係る政策・方針決定過程への女性の参画を拡大する。」については、理解促進が欠かせないと考えています。そのため、「加えて、ポジティブ・アクションの合憲性・正当性を周知し、積極的に利用を行う」を追記し、対応していくことを提案します。
  • 具体的な数値目標に対し、5年後に第六次計画を策定する際に、達成状況の検証を行うことを提案します。

2 男女共同参画と性差の視点を踏まえた研究の促進に関する提言について

【ジェンダーステレオタイプによる倫理問題の防止】

2 男女共同参画と性差の視点を踏まえた研究の促進(1)施策の基本的方向に関して、「男性視点」「女性の視点」という主観ではなく、ジェンダーステレオタイプ

に対する批判的な視点が取り入れられるべきです。以下にその必要性と具体的な提言を示します。

本項目で議論すべきは、研究成果やその利用におけるジェンダーの観点の倫理性の問題を防止することであると捉えられます。その際に必要なのは、主観的な「男性視点」「女性の視点」ではなく、ステレオタイプやアンコンシャスバイアスを孕んでいないかという客観的な分析であります。このように、研究内容が性差別などの倫理的問題を含まないかという視点は常に議論されるべきであり、研究チームが多様な構成員(男女共同参画の視点からは特にジェンダーの多様性)であることはそのような議論を活発にする一つの方法です。

以上を踏まえて、施策の基本的方向は以下のようにあるべきです。

  • これまでの、倫理的な問題をはらむ可能性のある研究・開発プロセスを見直し、ステレオタイプやアンコンシャスバイアスに対し批判的で積極的な議論を促進する研究・技術開発を求める。
  • 研究遂行過程において、研究チーム構成員のジェンダー多様性を推進する。」

また、「(2)具体的な取り組み」に関して、基本的方向の改善点を踏まえ以下のように変更を求めます。

  • ①ジェンダーへの倫理的問題を起こしうる可能性を最小限にするよう考慮した研究・技術開発を実施することにより、多様なジェンダーに対して平等な益のある研究成果を社会へ還元する取組を促す。
  • ②国が関与する公募型の大型研究について、男女問わず責任者となれるよう採択条件に、事業の特性も踏まえつつ、男女共同参画の視点の有無と取組状況を把握できる評価項目を設定する。とりわけ機会の平等に関して定量指標をもちこみ、応募数に対して一定の割合が女性となるよう努めること。
  • ③国が関与する競争的研究費において、いかなる事業であっても、出産・育児・介護等のライフイベントを理由に不採択とするのはハラスメントであると採択側に周知し、採択条件に、出産・育児・介護等のライフイベントに配慮した取組を評価する項目の設定を進める。
  • ④多様な価値観を持つ評価者の育成や配置、研究現場における性別役割分業など固定観念の打破、性別や年齢による差別がない人事運用や女性研究者のプロジェクト責任者への登用等を促進し、定量的な評価をもとに毎年改善していく。また、性別や年齢を理由に不当な扱いをすることはハラスメントであり、処罰の対象とする。

4 女子学生・生徒の理工系分野の選択促進及び理工系人材の育成について

【理工系分野におけるロールモデルの存在とその重要性の周知に関する施策】

内閣府委託調査「女子生徒等の理工系進路選択支援に向けた生徒等の意識に関する調査研究」によると、理数系科目の教員の性別は女子生徒の意向に大きく影響することから、ロールモデルとして非常に重要です。理科あるいは数学の教員が男性の場合、女子生徒が自らを「理系タイプ」と考える傾向は22.5%、どちらかの教科の教員が女性だった場合は33.8%と、11.3ポイントもの増加が見られます。しかし現在、日本において中学・高校で理数系科目を担当する女性教員は3割程度の少数であり、育成が必要な状況です。そのため、素案「4 女子学生・生徒の理工系分野の選択促進及び理工系人材の育成」の「③国立大学における、女性研究者等多様な人材による教員組織の構築に向けた取組や女子生徒の理工系学部への進学を促進する取組等」の部分に「理数系科目の女性教員を増やす教職課程での取組」を追記し、推進することを求めます。

また、「女子は数学が苦手」というステレオタイプを強化しないため、教育現場で用いられる教科書等における描写にもガイドラインを作成する重要性を示していただきたいです。メディア等における理数科目の教員を描いたイラストやアイコンは男性に偏りがちです。具体的には、「イ 男女平等を推進する教育・学習の充実  ② 固定的な性別役割分担意識や性差に関する偏見の解消、固定観念の打破を図るため、学校教育や社会教育で活用できる学習プログラムを開発し、活用を促す。」 に対し、「また、ジェンダーステレオタイプを考慮した教科書の編集ガイドラインを設ける。」を追記し、進めていただきたいです。

【教員や保護者へのアンコンシャス・バイアス、女子学生のステレオタイプ脅威に関する理解促進施策】

「4 女子学生・生徒の理工系分野の選択促進及び理工系人材の育成(1)施策の基本的方向」の中に、「理工系分野への進路選択に関する保護者や教員等の理解促進を行う。」と記載されている点については非常に重要なポイントであると考えております。前述の通り、教員や保護者のアンコンシャス・バイアスによって女子学生への理系分野への促進が男子学生より少ないというデータがあります。しかし、素案の記載では理工系選択のメリットを理解する取組のみが挙げられており、アンコンシャス・バイアスに対する取組がけ、女子生徒の理系進路選択を促進する。」と追記をお願いいたします。

また、特に内閣府の科学技術政策で提唱されているSociety 5.0の実現に向けてはAIやIoT等のIT分野に関するキャリア教育を重視すべきであると考えます。そのため、現在の素案にある「① 大学、研究機関、学術団体、企業等の協力の下、女子児童・生徒、保護者及び教員 に対し、理工系選択のメリットに関する意識啓発、理工系分野の仕事内容、働き方及 び理工系出身者のキャリアに関する理解を促す。 」に対し、「さらに、Society 5.0の実現に向けてはAIやIoT等のIT分野に関するキャリア教育を強化する。」と追記いただきたいです。

最後に

今回Waffleとしては、主に第四分野の科学技術と女性の分野で提言しました。

我々の根本的な考えとしては、

・今後どの分野でもITが使われ社会基盤となっていく段階で、女性が創り手となり多様な方々がいきやすい社会を目指したい。そしてIT化は変化もスピードも早い領域なので、アンコンシャスバイアスやステレオタイプをあらゆる場面で払拭するとともに、女性をIT分野に後押しすることは急務である。

・ただ、現状の素案では、全体的に危機感が薄く、具体性にかけている。

・そこで、他国と比べても日本は理系志望率もICT関連の仕事志望率も最低レベルであることを踏まえて危機感を持ち、数値的目標や具体的な施策とともに、次の5年の具体的な計画をもってほしい

です。

今後もWaffleとしてはより具体的な政策提言を行えるように尽力してまいります。

応援のほどどうぞ宜しくお願いいたします!

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1.OECD  Main Science and Technology Indicators, Volume 2020 Issue 1, https://read.oecd-ilibrary.org/science-and-technology/main-science-and-technology-indicators/volume-2020/issue-1_e3c3bda6-en#page33
2.  OECD PISA 2018 Insights and Interpretations, https://www.oecd.org/pisa/PISA%202018%20Insights%20and%20Interpretations%20FINAL%20PDF.pdf Figure 2
3. OECD PISA 2018 Insights and Interpretations, https://www.oecd.org/pisa/PISA%202018%20Insights%20and%20Interpretations%20FINAL%20PDF.pdf Figure 16a
4. 男女共同参画局 男女共同参画白書 令和元年版 第2節,http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/honpen/b1_s00_02.html
5. 森永康子「女性は数学が苦手」 ―ステレオタイプの影響について考える,https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/60/1/60_49/_pdf
6. OECD PISA 2018 Insights and Interpretations, https://www.oecd.org/pisa/PISA%202018%20Insights%20and%20Interpretations%20FINAL%20PDF.pdf
7. https://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2019/08/08/1419592_1.pdf

8. https://www.npr.org/sections/alltechconsidered/2017/08/10/542638758/colleges-have-increased-women-computer-science-majors-what-can-google-learn

9. https://japan.zdnet.com/article/35151856/

10. http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/girls-course_h29.pdf

11. 舞田敏彦, 「データをジェンダーの視点で読み解く」,We learn 2020年2月号