ジェンダーギャップ指数にみる女子STEM教育の重要性

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ジェンダーギャップ指数にみる女子STEM教育の重要性

2019年12月16日に世界経済フォーラム(WEF)から世界ジェンダーギャップレポート 2020が発表されました。日本が前回の調査よりさらにランクを下げて153ヵ国中121位となり、先進国のみならず途上国も含めてかなり低い順位であることをニュースで耳にした人も多いのではないでしょうか。今回は、この結果やレポート内容に関する私たちの考察をお話したいと思います。

「ジェンダーギャップレポート」とは何か

世界経済フォーラムは2006年から、ジェンダーによる不均衡(disparity)を「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野で評価したレポートの発表を始めました。「不均衡(disparity)の評価」と定義していることからも、不均衡が現実に存在して女性が不利な立場にあるということが大前提となり、不均衡と不平等を解消するための定期レポートと言えるでしょう。

日本のランキングの推移と所感

次に日本のランキングの推移を見てみましょう。その年によって調査対象の国数も異なるので、パーセントで上から数えてどのあたりに位置するかも記載しています。

2006年 79位(111国中 – 71.17%)

2016年 111位 (144国中 – 77.08%)
2017年 114位 (144国中 – 79.17%)
2018年 110位 (149国中 – 73.83%)
2020年121位 (153国中 – 79.08%)

調査開始時には71.17%で、その後10年余りで約8%も順位を落としていることがわかります。では、日本のジェンダーギャップは悪化しているのかというと、みなさんの実感としては必ずしもそうでもないのではないでしょうか?実際のところ、日本のジェンダーギャップは少しずつ改善してきてはいますが、他国が改善するスピードに追い付かず、結果として順位を落としています。この点は日本のみならず下位にランキングしている国に共通しており、変化や改善ののスピードが遅いことが順位低下の主要な原因になっています。

日本と同程度にランキングされている国では、アラブやアフリカなどの国が多くあります。例えば日本の少し上で118位のアンゴラ、119位のベナン、120位のアラブ首長国連邦。121位の日本の後には122位のクウェート、123位のモルディブ、124位のチュニジアと続きます。

多くの日本人は、こういったアラブやアフリカ地域の国々は、日本よりもはるかに女性の地位が低いという印象を持っているのではないでしょうか?しかし、これは現実として私たちが認識すべき日本の姿です。

教育面と健康面ではギャップが少なくなり政治面や経済面が大きな差を生んでいる

世界でも教育面や健康面ではジェンダー平等が実現しつつある国が増えており、この部分で各国の差は小さくなってきています。特に日本を含む東アジア圏では文化的に子どもへの教育を重んじる傾向があるため、教育分野でのジェンダーギャップは少なくなっています。

今回のジェンダーギャップレポートで順位差の要因となっているのは、主に経済面と政治面です。つまりジェンダーギャップ下位の国の女性は、高度な教育を受けたとしても、それが経済的な活動や政治的な発言力に生かされていないということが言えます。

日本のランクを下げる大きな要因になった政治面では、第4次安倍第1次改造内閣で女性閣僚がたった一人だったことが評価を大きく下げた要因でした。ジェンダーギャップレポートの政治面の評価では、過去50年に国の女性のトップの在任期間が何年あったかも評価対象になりますが、日本では過去50年どころか、憲政史上一度も女性の首相が誕生したことはありません

経済のギャップとそのために私たちが取り組むこと

経済面でのジェンダーギャップは完全な解消には時間がかかるものの、世界的には急速に進んできています。その一方で現在存在する職種の多くは今後消滅していくということも言われています。ということは、現時点で存在する職種のみならず、新しい職業分野でのジェンダーギャップ解消も重要課題ですが、残念ながらテクノロジーなど先進的な分野では女性が少ない傾向があります

世界経済フォーラムがビジネス向けSNSサービスを提供するLinkedIn社と共同で行った調査によると、この5年間で世界的に雇用が増えている職種はPeople and Culture、Content Production、Marketing、Sales、Product Development、Data and AI、Engineering、Cloud Computingの8分野です。このうちPeople and CultureとContent Productionの2分野のみでは女性の率が男性の率を上回っているものの、ほかの6分野ではいまだに男性が優位な状況です。特に高度かつ先進的なスキルが要されるData and AI、Engineering、Cloud Computingの3分野で、ジェンダーギャップが大きくなっています。また、この3分野では、「該当するスキルを持っていて、これから雇用される可能性がある人材」の中に女性が占める割合も低いことが、同調査で明らかになっています。

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(左側が男性の割合、右側が女性の割合。テクノロジー系の3分野は最も女性が少ない。)


世界経済フォーラムでは、これまでSTEM人材の供給側の努力はされてきているのに対して、雇用する側で女性がSTEM分野に進学、就職するモチベーションを高める努力が少なかったことに着目しています。そしてこの部分でのイニシアティブとして、50社の先進的な企業をターゲットに2020年から2022年の間に成長性が高くリーダーシップを持つ職種で女性を50%雇用すること、差別をなくす施策を計画しています。

このような世界経済フォーラムの動きは、Waffleの活動にも通じるものがあります。私たちは、テクノロジー分野でのエンパワーメントや教育を継続して行い、若い世代の女性にテクノロジー分野の楽しさを知ってもらうことで成長分野に女性が多く参加できる土壌を作り、ジェンダーギャップの是正に貢献したいと考えています。

(参考文献)ジェンダーギャップレポート2020
http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2020.pdf

(Waffleライター:Yukiyo)

#IT #ジェンダー #STEM教育 #ジェンダーギャップ #世界経済フォーラム